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薬局業界の最新動向

令和6年度 調剤報酬改定

  改定率 国費ベース
診療報酬本体 +0.88% 医科 +0.52% +800億円
歯科 +0.57%
調剤 +0.16%
薬価等 ▲1.74% 薬価 ▲0.97% ▲1200億円
材料 ▲0.02% ▲20億円
ネットの改定率 ▲0.81%  

2030年問題を見据えた薬局の将来像と2024年度診療報酬改定のポイント



団塊世代が後期高齢者となる「2030年問題」では、医療・介護需要の急増が予測されます。国はこの課題を見据え、地域包括ケアシステムの実現を医療政策の柱とし、薬局にはこれまでの改定同様、「対物業務から対人業務への転換」を強く求めています。2024年度の診療報酬改定は、その方向性をより一層明確にし、具体的な取り組みを促す改定となりました。

2024年度調剤報酬改定の全体像と実質的影響

2024年度改定において、調剤報酬は名目上0.16%のプラスとなりました。しかしながら、最優先課題である賃上げへの対応として、薬局の現場では給与のベースアップが求められています。このための原資確保の必要性や近年の物価上昇を考慮すると、多くの薬局にとって実質マイナス改定との見方が大勢です。一方で、今回の改定は単なるコスト調整に留まらず、国家的な医療構想の中で薬局が果たすべき新たな役割を明確に示し、持続可能な地域医療への進化を促すものでもあります。

具体的に、今回の改定で注目すべき主要なポイントは以下の通りです。

■質の高い在宅薬学管理の推進
医療・介護・障害福祉報酬の同時改定(トリプル改定)となった今回は、特に介護連携を重視した在宅領域での報酬見直しや、新設項目が目立ちます。かねてより「医療と介護の連携」は重要なテーマでしたが、例えばトレーシングレポート提出に伴う評価の新設などは、まさにその方針を具体化したものと言えるでしょう。質の高い在宅医療への貢献が、今後ますます薬局の重要な機能となります。

■かかりつけ機能の強化と患者への最適な薬学的管理の推進
「かかりつけ薬剤師」の評価見直しや、服薬指導後のフォローアップ、さらには選定療養の枠組みにおける新たな服薬指導の評価が新設されるなど、対人業務の一層の強化を促す内容となっています。これは、患者一人ひとりに最適化された薬学的管理を提供するという、薬局・薬剤師本来の専門性をさらに深く追求するものです。

■医療DXの推進と体制確保の評価
「医療DX令和ビジョン2030」の達成に向けた動きも加速しています。今回の改定では医療DX推進体制の確保が評価対象となり、マイナ保険証の利用実績に応じた3段階の評価と加算が導入されました。利用率が高い薬局ほど、高い評価と点数を得られる仕組みです。電子処方箋の普及については、2025年3月時点のデータで薬局の導入率は約68%ですが、病院・診療所の導入は依然として低い状況です。今後、特に個人経営の薬局では、導入コスト、システム連携、セキュリティ対策などが課題となり、DX化が難航するケースも懸念されます。マイナ保険証の利用に必要なオンライン資格確認システムの導入に留まらず、業務全般にわたる積極的なDXへの取り組みが、薬局にとって避けては通れない経営課題となっています。

本改定が及ぼす薬局M&Aへの影響と今後の動向

集中率は医療機関との位置関係に大きく依存しているため、自助努力で85%以下にすることは非常に難しい。そのため、本改定が薬局M&Aに与える影響は大きく、次に挙げる3つの事象発生が想定される。

  1. POINT01

    調剤基本料見直しによるM&Aメリットの増加

    (例)月間処方箋応需枚数が約1,500枚で、調剤基本料のみを算定している薬局の場合

    今回の調剤報酬改定では、調剤基本料が一律3点引き上げられました。このため、上記の薬局では「3点 × 1,500枚 × 12ヶ月 = 年間54万円」の増益が見込まれます。

    この増益は、薬局M&Aにおける主要な企業価値評価方法の一つである「EBITDAマルチプル法」で用いるEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)を押し上げる要因となります。仮に、EBITDAの3倍の評価額を提示する買手企業とのマッチングが成立した場合、企業価値評価額が「年間増益54万円 × 3倍 = 162万円」上昇する可能性が試算されます。

    さらに、連携強化加算においても同様に3点の引き上げが実施され、加えてこれまで算定要件であった地域支援体制加算の取得が必須ではなくなりました。これにより、従来は調剤基本料、または調剤基本料と後発医薬品使用体制加算のみを算定していた薬局にとっては、本改定を機に、処方箋1枚当たり最大10点程度の増益が見込めるケースも出てきます。

    月間処方箋応需枚数が約1,500枚の薬局がこのケースに該当する場合、年間180万円の増益が見込まれ、前述と同様にEBITDAの3倍で評価された場合、企業価値評価額は500万円以上(年間増益180万円 × 3倍 = 540万円)の上昇も期待できると考えられます。

  2. POINT02

    高集中率の調剤基本料1算定薬局の売却急増

    一方で、処方箋集中率に関しては、引き続き減益要因として懸念が指摘されています。

    今回の改定以前より、財政制度等審議会(財政審)の分科会等では「処方箋集中率が高い薬局における調剤基本料1の適用範囲を縮小すべき」との改革の方向性が強く示唆されてきました。

    今回の改定における集中率に関する見直しは、結果として、複数の医療機関に隣接する、いわゆる医療モール型薬局の一部が主な対象となりました。しかしながら、将来的にはこの集中率に関する規制がさらに強化され、適用範囲が拡大されることも想定されます。 その場合、現在調剤基本料1を算定できている薬局であっても、これまで通りの収益を維持することが難しくなる可能性があります。

    このような背景から、今回の改定が(調剤基本料の引き上げなど)一部薬局経営者様にとっては収益改善の好機と映る一方で、かねてからの懸念材料であった集中率の問題が将来的に収益を圧迫するリスクも依然として存在します。そのため、状況を総合的に判断し、比較的好条件での評価が期待できる今のうちに、集中率の高い薬局の売却を決断される動きが活発化することも予測されます。

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