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逆風
経営者の高齢化、業界先行き不安、薬剤師不足、大手調剤・ドラッグストアのM&A攻勢などを背景に、調剤薬局のM&Aは増加の一途を辿ってきました。
本項では、薬局業界の最新データを基に、様々な角度から調剤薬局の業界環境を考察しました。
業界成熟期を迎え、どの様にM&Aを考える必要があるでしょうか。
逆風
過去診療報酬改定の推移
ただ処方箋を待っているだけでは淘汰される時代
薬価差益の減少や加算の廃止や算定要件の厳格化による技術料の減少=収益力の低下
調剤報酬の改定実態
薬価等改定率(%) | 診療報酬改定率 (医科+歯科+調剤)(%) |
診療報酬全体改定率(%) | 調剤のみ改定率(%) | 調剤実質改定率 (薬価等+調剤)(%) |
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1998年 | -2.8 | 1.5 | -1.3 | 0.7 | -2.1 |
2000年 | -1.7 | 1.9 | 0.2 | 0.8 | -0.9 |
2002年 | -1.4 | -1.3 | -2.7 | -1.3 | -2.7 |
2004年 | -1 | 0 | -1 | 0 | -1 |
2006年 | -1.8 | -1.36 | -3.16 | -0.6 | -2.4 |
2008年 | -1.2 | 0.38 | -0.82 | 0.17 | -1.03 |
2010年 | -1.36 | 1.55 | 0.19 | 0.52 | -0.84 |
2012年 | -1.38 | 1.38 | 0.004 | 0.46 | -0.92 |
2014年 | -0.63 | 0.73 | 0.1 | 0.22 | -0.41 |
2016年 | -1.33 | 0.49 | -0.84 | 0.17 | -1.16 |
2018年 | -1.74 | 0.55 | -1.19 | 0.19 | -1.55 |
2019年 | -2.4 | – | – | – | -2.4 |
2020年 | -0.99 | 0.55 | -0.44 | 0.16 | -0.83 |
2021年 | -1 | – | – | – | -1 |
2022年 | -1.35 | 0.43 | -0.92 | 0.08 | -1.27 |
2023年 | – | ||||
2024年 | -4.67 | 0.46 | 0.88 | 0.16 | 1.13 |
厚生労働省の統計データを参考にし、当社作成。
2035年には、国内総人口の約3割が65歳以上になると推測され、現行の医療保険制度の維持には医療費抑制が喫緊の課題です。
厚生労働省は、医療費抑制策の柱として、ここ20年間で倍増した薬剤料の削減を掲げてきました。その背景には、薬価差益獲得を目的とした医薬品の過剰利用が薬剤料増加の一因であるとの認識があり、薬価の引き下げが継続的に行われています。
この引き下げを事実上加速させる目的で中間年改定が導入され、薬価は毎年改定されることになりました。しかしながら、この中間年改定については、医薬品のイノベーション評価や安定供給に逆行するとの批判から、廃止を求める声も上がっています。
さらに政府は、後発医薬品の使用促進策として後発医薬品調剤体制加算などを導入し、2023年までに数量ベースでの使用割合80%超という目標を令和元年以降、継続して達成しています。次なる目標として政府(厚生労働省)は、2029年度末までに後発医薬品の金額ベースでの使用割合を65%以上に引き上げることを掲げています。
将来的には、現在評価されている後発医薬品調剤体制加算が廃止されたり、調剤基本料やその他の加算の算定要件に組み込まれたりする可能性も想定され、これが薬局の技術料収入をさらに圧迫する要因となることも懸念されます。
このような状況の中、薬局には在宅医療推進への一層のシフトが求められており、その機能を高める目的で地域連携薬局の認定制度も導入されました。また、地域支援体制加算の算定要件である在宅医療の実績(処方箋受付回数など)も段階的に引き上げられています。
もはや、ただ処方箋を待つだけの薬局は淘汰される時代が到来しつつあるのではないでしょうか。
薬価政策の今後の行方を占う調剤医療費の推移
2023年の国民医療費は46兆 6,967億円にのぼり、前年度の45兆359億円に比べ、1兆6,608億円、3.7%の増加となっています。
そのうちの約8兆円を調剤報酬が占めていますがその主因は、こちらも20年間で2倍以上に増加した薬剤料です。
厚生労働省は、医療費削減を掲げていますが、深刻な高齢化社会である日本において、薬剤使用量そのものを削減することは容易ではありません。
そのため、薬剤料の削減は、薬価の引き下げや、ジェネリック医薬品の促進に頼らざるを得ない状況です。
後発医薬品体制加算の今後
調剤報酬改定を重ねる度に、後発医薬品調剤体制加算の算定条件は厳しさを増し、多くの薬局が新基準を満たせず、収益減少を余儀なくされる環境になりました。
政府は、その影響の中でジェネリック医薬品の使用率については、『2023年までに販売数ベースで80%を超える』という、当初の目標を令和元年以降達成しています。
しかしながら価格の高い薬の置き換えが進んでいないことから金額ベースでは56.7%でとどまっています。これに伴い厚生労働省は2029年度末までに金額ベースでの割合を65%以上に引き上げることを新たな目標として掲げています。
また、段階的な後発加算の算定要件の厳格化の中で、中堅中小薬局の中には、ハードルの高い後発品調剤体制加算の算定を諦め、薬価差益の「割引率」ではなくより「差益額」を大きく取れる先発品へシフトする逆流現象も起こっていますが、一定の使用率を下回る薬局には技術料の減算ペナルティが課されるなどの対応も取られています。
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